1985年10月B日
スゴイ人に酒

パース在住の日本人を語る時、この人を絶対抜きにはできないといわれるX氏という豪快な人物がいる。
彼はオレの高校の近く(あえて場所は言わない)で道場をされていた某武道の師範レベルの達人で、このパースで十数年前から道場を開き、昼は時間をもてあますためラーメン屋をされている。
彼はオレたちのレストランの常連さんで独身ということもあって、店に来てはよくオレたちと夜遅くまでワーワーと飲み合うのである。
X氏は飲むと際限なくゴーカイに、マシンガンのようにしゃべられることが多いが、先日の話ぶりはまさにゴーカイ、ツーカイ、大ハクリョク、完全にブッ飛ばされた。
その夜、ウェイトレスたちがみんな帰って、時計はすでに午前1時ぐらいを指していた。店内はスズキ氏とノリさんとボズとオレとX氏の5人になり、X氏が持ってこられた日本酒の酔いも十二分に回って、話がオンナの方へと向かっていったころ、かのゴーカイ話はゴーカイにテイクオフされた(以下、臨場感を出すために関西弁で。50才になった島田神介の口調を想定してもらえればありがたい。)
「イヤー、この国の女ゆうたら、ホンマにあいそなしや。ふつう女郎屋に1ヶ月通うたら、ちょっとはあいその一つも見せよるもんや。なあ、そやろ?スズキはん?」
「そうですねえ・・・・。」
「そやけど、ジョージストリート(パース駅裏から歩いて5分足らずの“その手”の店が並ぶ通り。表には何の看板もない)の××番の女どもは、いまだにオレに何のあいそも見せよれへん。サリーいう女なんか何回連続で指名したってもただマタを開くだけや。オレのあそこをさわろうともしよれへん。腹立つやろぉー、なぁ?」
「しゃあけどオレも年とったわぁ。ム×コが最近あんまり立てへんようになってもうた。」
「それは・・・・。」
「そこでなスズキはん、オレええこと考えついてん。それはなんちゅうか。早い話がム×コの鍛え方や。」
「そやかてあんた、空手みたいにドツいたらあきまへんでぇ。インポになってもうたら、ホンマ何しとんのかわかれへんようなるもんなぁ。そうなったら、この世ともバイバイしたんと同じことやがな。そやろ?」
「そうですねえ・・・。」
「それでな、わしが最近考えついた方法ちゅうのんは、バスタオルをあっこに引っ掛けて歩くっちゅうやり方なんや。最初は引っ掛かりがもひとつ悪かったんやけど、エロ本を読みながらやるようになったら、コレがあんさんよう効きまんねん。」
「・・・そうなんですか・・・?」
「この頃はもう乾いたままやってもアホらしいぐらい簡単やから、バスタオルに水を染み込ませてやってまんねん。そやけど、バスタオルっちゅうもんも水を染み込ませると重たいもんでっせぇ。やっぱり全部に染み込ませたら、オレの必殺のム×コももちまへんなぁ。今んとこ半分ぐらいやったらなんとかできまんねん。ええ?なぁスズキはん、オレもすごいやろ?すごいってゆうてくれる?なぁ?」
「ス、スゴイですねえ・・・。」
「そやろ。あんたも独身やさかい、気ィつけなあきまへんでぇ。ム×コも使わんかったら元気のうなっていくよってになぁ・・・。しゃあけど、日本のオナゴのあそこ、おがんでみたいなあ・・。もう長いあいだおがましてもろてへんけど、やっぱりオレにはあれが一番ええわ。ホンマ・・・。おおい、おまえら、ワーキングホリデイのニイチャンら。おまえら日本へ帰ったら、日本のオナゴのアソコを送ってくれや。頼むわぁ、なぁ・・・・。」
とまあこんな具合で約30分間、X氏は独演されたわけだった。
最初はオレたちも氏の話し口があまりにおかしく大笑いを続けたが、さすがに最後の方にはもう笑えなくなり、ただ目尻を下げて笑った顔を作る努力をするばかり。はっきり言って、彼の話を聞いている間オレたちは金縛りの状態になっていた。
氏が帰った時は4人で顔を見合わせ、誰かが、
「今日はスゴかった・・・・。」
と一言いっただけで、みんなまだ顔を引きつらせながらうなずき合っていた。
この夜、この大人物が大声で上記の話をしながら、アソコを突き出す格好で、ガハハハハと上品な笑い声を上げて、ガニ股で店の中を走り回る、というオマケまで付けて下さったことをオレは一生忘れないだろう。
鬼に金棒、弁慶に薙刀など、強いものにさらに一層の強さが加わることを表す言葉があるが、今日からは「スゴイ人に酒」というのも覚えておくことになった。
以上は酒の酔いのため、自分の記憶が多少あやふやな面があることは否めないが、決してオレの創作ではない。あくまですべて事実の見聞にもとづいていることを付け加えておく。
やはり外地でたった一人生きていくということは、並大抵のことではないのだ。
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