B-20 ポートウォルコットの狂った岸壁

1986年2月C日

ポートウォルコットの狂った岸壁

ポートウォルコット, 桟橋
「引用:リオティント社サイト」
<注意>写真は現在のもので4隻停泊している。1986年当時は2隻だけ停泊可能だった。

 今日の午前、フランス船への搬入を無事すませたが、初めて行ったあのポートウォルコットの岸壁はダンピアのEII岸壁のまだはるか上をいく、絶望的に危険極まるところだった。

 ダンピアとは反対に東の方向に向かってカラーサを発ち、真っ赤な砂漠を越え、岩山を越え、水の干上がった川を越え、3両編成のロードトレイン(全長約40メートル)を約30秒かかって追い越し、ほとんど交差点のない65キロの道のりを突っ走った。

 こちらの入り口ゲートの守衛はおおらかなのか、サボっているのか、なんのチェックもしない。鉄鉱石の砂塵をかいくぐって、巨大な設備機械を両側に身ながら制限速度をオーバーせぬよう気をつけながら運転し、岸壁の入り口までなんとか到着。

 ここもまた積み出し専門の港で、岸壁は鋼製のシンプルな構造の桟橋である。そしてまさに驚嘆すべきはその桟橋が、海岸からなんと2,700メートル外海の方へ一直線に突き出すような格好で作られているということ。

 ダンピアのEII岸壁と同じように、陸から海に向かって桟橋の右側にはコンベアベルトが走り、左半分約3メートルが車の通用路となっている。もちろんこの桟橋の縁も高さ約25センチのブロックがあるだけだ。

 そしてその2,700メートル先の突端から陸地側300メートルほどの範囲に船が着岸する。船は桟橋を挟んで両側に2隻停泊可能だ。

 この桟橋へ入っていく時は必ずその手前にあるファオマン室に入って、フォアマン(管理人)の許可を得なければならない。なぜなら桟橋の突端にある車のパーキング容量がわずか8台しかなく、もし9台目の車がパーキングエリアに入っても駐車する場がなく、迷い込んだドライバーは1キロばかりバックで運転して、途中のパシングエリア(待機エリア:車がすれちがえるように通用路を拡幅してある箇所)まで戻らねばならないからだ。

 桟橋へ車を乗り入れるとまずヘッドライトを上向けに点灯し、対向車にこちらの存在を遠くからでもわかるようにする。もし対向車がやってくるのがわかれば、パシングエリアでやり過ごすまで待つ。ここでは冗談、悪ふざけ、ルール違反は絶対に禁物だ。何よりも自分の命は自分で守っていかねばならない。

 2,700メートル先のパーキングエリアで駐車する時は、細心の注意を払って駐車する位置を選択する。救急車が方向転換するためのスペースは絶対に確保せねばならない。

 車から降り、鉄鉱石の破片が風に乗って飛んでくるのを避けるため、サングラスを着用し、徒歩で250メートルほど陸側へバックして、船へと向かう。もちろん、ここの桟橋の上での歩行もダンピアと同じように、ヘルメットと安全靴を着用していない限り禁止である(実際この二つがないと、到底ここをのんびりと歩けないが)。

 ゴーゴーとうなり声を上げながら、ハッチへ黒みがかった茶色の鉄鉱石をどうどうと流し込んでいる巨大なローダーの下をくぐる。ここにもダンピアのEIIと同じで桟橋と船との中間に緩衝岸壁があり、桟橋の横に取り付けられた急な階段を下って緩衝岸壁に降りる。

 見上げると、ここの桟橋の海面上高はEIIよりさらに高く、約15~16メートルか。船の喫水(きっすい。船底から水面までの高さ)を考えれば、この桟橋は海底から40メートル近い高さを持つ、恐ろしいくらい巨大な構造物ということになる。

 いったいどうやってこんなバカでかいものを、こんな外海の真っ只中に作ったんだろうか、という疑問が1年前まで土木の業界にいた者にはごく自然にわいてくる。この国の技術水準ではおそらく何人かの人々が、これを建設する際にその命を犠牲にされたことと思う。

 緩衝岸壁はタテ×ヨコが7×8メートルぐらいの平場で、海面上高は潮の干満にも大きく左右されるが、平均で約3、4メートルか。外海のためか、EIIと比べるとここは波が高く、風も相当きつい。そこから船のタラップをつたって、ようやく船の甲板へとたどりつくのである。

 桟橋の縁にはEIIと同じような高さ25センチぐらいの材木が固定してある。だがこの緩衝岸壁の縁には何の足止めもない。これらの上を歩いていて、ちょっと突風でも吹けば、強制的にスカイダイビングの練習をさせられかねない。万が一の折りには、サメも海ヘビも殺人クラゲもいないことをただ祈るだけだ。

 そしてまた、車でこの2,700メートルの桟橋を走ることは、ローラーコースターが、鯛のあらだきよりも、あんかけうどんよりも、しゃぶしゃぶよりもまだ好きという人以外は、マタの間に冷ややかさ(女性の方は知らないが)を感じずには到底いられないほどのスリルである。毎日この桟橋で仕事をしているやつらは時速80キロ以上の猛スピードでブッ飛ばすが、いったいやつらは命が惜しくないんだろうか。それともホンモノのバカなのか。

 今日のフランス船は乗組員の人たちにも手伝ってもらってなんとか無事にこなしたが、はっきり言ってこの港には船が入ってきてほしいとは思わない。こんなクサッたところで命を落とすなんて、まさにハエ死にでしかないからだ。

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