C-14 シドニーの心地よさと永住への思い

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1986年10月C日

シドニー, オーストラリア

 シドニーは観光にも事欠かない町だ。ビーチは世界レベルのが数多く東海岸に点在し、西には山岳地帯があり、サーキュラキーからは各所への遊覧クルーズの船が出て、など。時間はいくらあっても足りない。

 あとたまたまだが、オレの滞在時には世界レベルのテニス選手が出る試合が何度か行われた。当時世界一を争っていた、イワン・レンドル、ボリス・ベッカー、ステファン・エドベリなどの選手が出る試合がRedfernのロッジから徒歩圏内のエンターテインメントセンターでよくやっていた。

 料金も10豪ドルほどで、選手から10-20メートルの距離の席が取れたので、毎日のように観戦が楽しめた。

 ほんと休みの日には行くところがいくつもあって、たいてい晴天なので、どこへ行っても気分よく時間が過ごせる。カラーサでの日々とは180度異なって、ここではまさに穏やかな天国のような日々を過ごすことができている。

 で、よく考えれば、実際はこういう生活がまさにワーキングホリデー旅行者の理想的な形なのかもしれない。多くのワーキングホリデー旅行者は日本での暮らしとは異なった自由でストレスのない生活を求めて来ているのだろうし、そういう人にとってはここシドニーでの何の不自由もない生活というのは一生の思い出になるのだろう。

 店の若者たちは2,3日おきにそれぞれの家に友人たちを呼んでパーティをしている。オレも何度か参加させてもらったが、彼らはほんと楽しそうだ。

 みんなでお酒や食べ物を持ち寄って、おカネを特にかけず、日本人だけでなく同居のオーストラリア人たちとわーわーやっている。日本の家とは違ってこちらはリビングルームが広く、庭も使えるので10人や20人の集まりも多い。

 こういう楽しい生活を続けたいとこの国での永住権を望む人たちは多いが、それは十分に理解できることだ。

 ちなみにこの国で生活をずっとしていくことを何度か考えたことはあるが、オレはいまそうしたいとは思っていない。やはりオレたちはこの国にあってどうしてもマイノリティであり、それは一生変わりはない。

 どれだけ英語能力が現地人に近づいても、こちらの生活に慣れ親しんでも、外見的あるいは文化的にオレたち日本人はこの国で生まれた人たちと同一の市民になれるとは思えないからだ。そのへんはイギリスやヨーロッパから来た移民の人たちとはどうしても異なる。

 それにオレたちの国は幸いにもオレたち日本人が住むにはやはり最高の場所であることは間違いない。

 ただいずれ日本に絶望した時に考えるのは、おそらくこの国でのこういう穏やかな生活のことだろう。その時にはこの国への移住とかを考えることになるのだろう。

 そんなときが来るかどうかはわからない。ただそういう選択肢を持たせてくれたこの国には感謝の気持ちを持つべきなのだと思う。

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