D-03 驚愕バンコクの世界一ストリップショー

Select-Language

1986年11月C日

パッポン通り

 国中に70万をこえる売春婦さんを抱えるというタイの夜の中心地がここバンコクのパッポン通りである。虹色のネオンサインに彩られたバーやディスコ、ナイトクラブが文字どおりところ狭しとひしめくこの通りは、マニラのエルミタと並ぶ東南アジア最大の歓楽街だ。

 オレは今日ホステルでベッドが隣同士になったイギリス人の男とパッポンの街へと繰り出した。欧米の安旅行者にとってもパッポンは大人気の場所で、数日前にドイツに帰ったアーニャの国ドイツの男もたくさん来ている。

<メモ>
ちなみに日本人の客はここから200メートルほど離れたタニヤ通り(=ソイイープン=日本人街)というストリートに行く。そこでは店の看板が日本語で、日本語を話すホステスさんがいる。

 このパッポン地区はオレにとってはテーマパークのようなエンターテインメントの場であるので、バンコク滞在中は宿のある東南アジアのバックパッカーの聖地カオサンロードから、三輪タクシー(こちらではサムローまたはトゥクトゥクという)を飛ばして頻繁に通っている。

  初めて来た者には、派手な夜の店に入る時どうしてもためらう気持ちが立つものだが、ここパッポンでは表通り裏通りを問わず、店らしい店の構えをしている店ではまずボラれる心配はないというのが通説だ。

 しかし通りを歩いている時、どこからともなく寄り添ってきて、言葉巧みに誘いかけてくるやつらにはゼッタイについていってはいけない。

 知り合いのドイツ人はここを歩いていて、スペシャルパフォーマンスを見ないか、と誘われついてゆき、二人でビール2本とピーナッツで800バーツ(40米ドル)という、なんとパッポンの相場の20倍くらいの料金をボッたくられたという。

 またあるオーストラリア人は通り上で誘われてついて行った店の中へ入ったとたん、ドアに内側から鍵をかけられ恐ろしくなり、その鍵をかけたやつの首を締め上げ、鍵をこじ開けて這う這うの体で脱出したとか言っていた。

 カネで済むならばまだしも、下手をすればケガをしたり、さらには命に係わることにならない保証はない。怪しい夜の町にあっては常に身を守ることを第一に考えながら遊ぶことが必要だ。

 この通りで最も目立つのがゴーゴーバー。その中はドアを開けるや否や、暗い店いっぱいにディスコ音楽の洪水である。ほとんどの店はだいたい日本の喫茶店ぐらいの大きさで、細長いカウンターがあって、そのヘリに椅子が据え付けられている。

 この街の押しも押されぬ主役の美しいホステスたちは、ラメやフリルの付いた超派手なブラとパンティーだけをキンキラキンと身にまとい、交代でステージに上がって踊る。休んでいる娘たちは客の横に座り、身を寄せて話し相手になってくれる。

 外国語をほとんど理解しないこの国の人々にあって彼女たちは例外的な存在で、ここパッポンで働くほとんどのホステスは英語ないし日本語を話し、他のメジャーな言語を話す子もいるようだ。

 この世界にその名を知らしめた歓楽街でやっていくには、魅力的な肉体と外国人相手のコミュニケーションの道具とを身につけることは、何にもまさる必須の条件だということか。彼女たちは500バーツから1,000バーツ(20米ドルから40ドル)で客を取るのが一般的なようだ。もちろんイイ女ほど値がはるのは言うまでもない。

 このホステスたちとともにパッポンの名を世界に知らしめたものが、なんといってもストリップショーであろう。 ここのストリップショーはアーニャと行ったシドニーのマンダリンクラブのそれとは全く異なるレベルだ。アーニャがここへ来たらはたしてどんな反応を見せたのか考えるのも怖い。

 数あるその手の店の中で、我々安旅行者の間で有名だったのがQ.C.という店。パッポンのメインストリートに面し、料金もコーラが45バーツ(2ドル20セント)ときわめて良心的である。

 この店のドアを開けると、ここも大音響と七色のフラッシュライトの嵐。店の中央に畳8畳ぐらいの正方形のステージがあり、その周りを三重、四重にカウンターと椅子が取り囲む。客は他のパッポンの店と同じくほとんどが欧米人で、男だけの二人連れ三人連れのほか、夫婦連れで来ている中年の紳士、淑女も多い。

 客の間あいだにはホステスたちが座っている。常に超満員のこの店では、客の膝の上に抱かれるように座っている娘たちもいる。

 かなり年期のはいった英語のアナウンスで、ショーがにぎにぎしく始まった。そしてそのあとに続くショーはそれはもうまさに「凄い」の一言に尽きた。人間技とは思えぬワザが、この小さな店の中で開店から閉店までこれでもかこれでもかと延々と続いていく。

 最初のパフォーマンスは、ダンサーがタマゴを女性自身の中に入れたままステージ上を歩き回り、床に置かれたグラスの中へきっちり正確に落とす技。そのタマゴのすべりをよくするためか、踊り子たちは一度自らの内側に入ったタマゴを、最前列の若い男性客のビールの入ったグラスの中へ浸す。客はそれを回りに向かってうまそうに飲んで笑いを取る。

 次は、皮をむいたバナナを女性自身の中に挿入し、それを思い通りの長さに切る技。むろん道具は一切使わない。そして踊り子はブリッジの体勢を作り、客席の中で一番ワル乗りしている客に向かって、あそこからバナナをシュバッと発射した。あのバナナが飛んで行くスピードだけはまったく信じがたい。中に火薬か何かが入っているのではないか、と思えるほどだ。

 またまた女性自身を使う技。ビン入りのコーラを片手に持った踊り子が登場する。うやうやしく踊ったあと、最前列の男性客のひとりにそのビンの栓を素手で開けてみて、と彼女はそのビンを渡す。客は当然開けられるはずもなく、白人特有の口をへにして両手を広げ、お手上げの動作をしてビンをまた踊り子に返す。

 そして再びうやうやしく踊り、BGMが最高潮に達したとき、彼女はビンを自分の秘部にあて、ジャーンというシンバルの音とともにそのビンの栓を抜いた。泡がステージに散り、コーラがしたたり落ち、栓が床の上をころころと転がった。

 秘部に栓抜きが入っていたためだが、驚嘆の声とともに観客が割れんばかりの拍手をもってそれに応えたのはいうまでもない。オレはただボー然とフロアに散ったコーラの泡が七色のライトにきらめくのに見とれただけだった。

 そして極めつけは、とびきりの美女と美男の48手のからみ(日本ではマナ板ショーと言われている)。ロマンチックなメロディに合わせ、前から横から後ろから、組んずほずれつ、ありとあらゆる体位を彼らはひとつひとつ恐ろしいぐらい優雅に華麗にこなしていく。このニイチャン、いったいどれくらいもつねん?と感心するほど、この男性方の青年はネバり強かった。

 そしてステージの二人のパフォーマンスもさることながら、オレには斜め前の席に座っていたカナダ人らしい初老夫婦の様子がマコトに印象的だった。

 夫君は途中まで食い入るようにステージを見つめていたが、やがてなぜかうつ向いたまま肩を落としていた。対して細君の方はまばたきもせず、口をポカンと開け、トロンとした眼差しを潤ませながら、ステージの二人を熱く見つめていた。

 さてこの初老の夫婦、これから宿へ帰っていったいどんな会話を交わすのか。オレは小さくなったこの夫君の肩をたたいて励ましてあげたいような衝動にかられた。あんた、まだまだ若いモンには負けられまへんやろ、といいながら。

 こんな具合でここバンコクの夜は、4つのEをもって、つまり実にエロチック(Erotic)かつエキゾチック(Exotic)かつエキセントリック(Eccentric)かつエキサイティング(Exciting)に過ぎていく。

<前のページ><次のページ>

 

よかったらシェアしてね!
  • URLをコピーしました!
  • URLをコピーしました!

コメント

コメントする