1986年8月B日
アデレードにて-ドイツ人女学生と遭遇

36時間のバスの旅はさすがに疲れた。乗りっ放しで車中2泊というのは生まれて初めて経験だった。
シドニーまで直行する人たちはこのあとさらに36時間、合計3日の旅をするそうだ。まあ、がんばりなはれ、と応援。
南オーストラリア州の州都アデレードはパースと同じくらい約100万人の人口。町の中心も同じくらいの大きさと賑やかさ。教会の町と呼ばれるこの美しい街で、アーニャという西ドイツの女の子と会った。
彼女はハンブルグの大学で修士を取り、その修了前実地研修(いわゆるインターンシップ)のような形で、この町に来ているのだという。
宿のYMCAの掲示板をにらみながら、夕食をどこで食べるか迷っていたとき、たまたま横にいた彼女に尋ねたのがきっかけで、アデレードにいた三日間ずっと彼女と夕食をすることになった。
彼女がオーストラリア人にはそれほど多くない真っすぐの金髪と青い目を持つということのほかに、何か彼女には女らしさみたいなものを強く感じた。
カラーサというような男も女も荒っぽい町に長くいた後だけに、特にオレがそう思ったのかもしれないが、オーストラリアの女の子とはかなり違ったムードを持った女の子である。
彼女は1年半もこの国にいてさらにまた旅を続けようとするオレに興味があるのか、矢継ぎ早にいろんな質問を浴びせてきた。日本を出る前は自己嫌悪に押しつぶされされそうだった、と言ったオレのセリフがドイツ人気質には適合しないのか盛んに不思議がっていた。
もうすぐドイツからボーイフレンドが来るらしく、二人でエアーズロックからグレートバリアリーフや東海岸方面を旅行すると言っていた。
オレがシドニーに行くつもりだと伝えたところ、彼女も9月後半には行く予定とのことなので、シドニーでの再会を約束した。
彼女はほんとに久々に会う心から打ち解けて話ができる女の子だった。バイバイをしたいまも、心の中がやんわりと暖かい。
<メモ>
どういう因果か、このあと彼女とはアデレード以外に世界の3カ所でも会うことになっていくのだが、縁とは不思議なものだ。
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