1985年9月A日
アヤコさん正セッター&男子チームごだごだ

アヤコさんは入ってまもなくレッドスターのスーパーリーグの女子チームの正セッターとして活躍し始めた。正直言って自分の目には、元ジュニアジャパンのセッターとしては彼女のプレーはまだなんとなく物足りなく映るが、彼女の実績を考えればすぐに調子を上げてくることだろう。
トニーは西オーストラリア州の女子選抜チームの監督をする予定になっているそうだが、彼によるとアヤコさんはほぼ間違いなく選抜チームに選ばれるんでは、ということである。もし選抜チームの正セッターとなれば、西オーストラリア州バレーボール協会の全額出費で、オーストラリア全州の首都を試合して回るという、大きな栄誉と特典を得るわけである。
全く偶然だが、昨年もワーキングホリデイで来たヒサヨという、鹿児島出身の18才の女の子が、西オーストラリア州の選抜チームの正セッターとしてこの州対抗リーグに出場したということである。
戦績は知らないが、そのヒサヨさんはその州対抗リーグを大いにエンジョイしたということで、もしアヤコさんもまた選ばれることになれば、2年連続で西オーストラリア州の正セッターは日本人のワーキングホリデイ旅行者というかなりユニークなことになる。
現地の人たちには少し気の毒な感じは否めないが、若いお二人には何よりも素晴らしい経験となるであろう。残念ながらオレの方は、新聞には載ったものの、決定的に身長が足りず、プレーもいま一つ冴えを欠いている。州代表とかの見込みはほとんどないと言えそうだ。
それよりも、最近ここへ来て、レッドスターの男子チーム内にもめごとが多くなり、チームのムードが沈滞気味になってきたことが気にかかる。うちにはまあまあの力量のセッターが二人いるが、最近、二人がこれから数週間は私用で練習にも試合にも出れないと言いだした。
またエースのデニスは腰が痛いとかで、全然スパイクに破壊力がない。そしてもう一人のエース、マークは彼女が金曜の夜に二人の時間を取りたがるとかで、練習に来たり来なかったりだ。
そしてそれらのトバッチリを受けて、なんとオレが代役セッターとしてかつぎ出されることになった。中学校の時にほんの少しばかりトスの練習をしたことはあったが、まさにそんなの遠い遠い昔のことでしかない。高校、大学の同好会とずっとエースの位置にいたため、セッターのカンなどないに等しい。
はたして、セッターとして出場した初めての試合は、力にやや開きのあるチーム相手で、どうにかこうにかごまかして勝つには勝ったものの、次のチームにはセッターの差でまったく歯がたたず、コテンパンにやられてしまった。
スーパーリーグの準決勝、決勝まであと1ヶ月と少ししかない。レッドスターはすでに2位ないし3位を確保し、準決勝進出を決めている。だが、このままでは結果は火を見るより明らかだ。これまでのように控えスパイカーやピンチサーバーとしてでなくレギュラーとして試合に出られることは、オレにとってはハッピーだが、チームの勝敗を考えればそれは決して望ましいことではない。
この国のやつらのいい加減さが、こういう時には、ホント辟易させられる。
1985年9月B日
ノリさんの展示会始まる

フリーマントルでノリさんの有田焼展示即売会が始まった。初日は土曜日ということもあって大盛況。そして今日の日曜日も引き続いて、なかなかの人の入りであった。
オーストラリアの日本への関心が、最近いかに高いかを証明するかのようにたくさんの人々に来てもらって、われわれスタッフとしても喜びにたえない。
お客さんの中には全オーストラリアホテル協会の会長夫人とその娘さんやら、ノリさんの友人の高級ブティックのマネージャーが連れてきたお金持ちたちやら、かなりのアッパークラスの人たちも多くみうけられ、華やいだ雰囲気に包まれた2日間だった。
展示品は飾り皿(直径30センチから50センチぐらいのもの)、お銚子セット、小皿セットなど、日本人のオレの目にも極めて優れ、エキゾチックな香りのするものが並んでいる。ギャラリー内あちこちから、ウワー!とか、すごい!とか、期せずして沸き上がる感嘆の声を聞いて、われわれも自然と笑みを交わし合った。
ただ気がかりなのはその価格である。小皿一枚で最低10ドル、お銚子セットが50ドル、飾り皿になると平均350ドルぐらいと、ちょっとこの国の並みの市民には手の届かないレベルに設定してあるが、はたして、これで買っていってくれる人がいるんだろうか。
この2日間でどれくらい売れたのかよく知らないが、売上げ高によってオレへのお祝儀の額も変わってくることを思えば、お客様どうぞ買って下さい、とすがって回りたいぐらいの心境にもなってくる。
これから2週間先、はたしてオレはノリさんと一緒に歯を出して笑っているだろうか。それとも・・・・。
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