G-31 エジプトでの信じられない日々の始まり

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1987年5月K日

スエズ運河

 イスラエル最大の都市テルアビブからエジプトの首都カイロまでのバスは特に見るものもなくただ砂漠を越えていくだけ。砂と有刺鉄線とをずっと眺めたあと、昼食のためドライブインのパーキングにバスは止まった。

 少し疲れてぼーっとしながら100メートルほど先のドライブインの建物まで歩いているとき、オレは自分の頭がおかしくなったのか、あるいは夢を見ているのかという光景に出会う。

 ドライブインの建物の向こうに大きな壁がそびえているのだが、なんとその壁の上辺に沿って大きな船の煙突のようなものが煙を吐きながら右から左へゆっくり動いていたのだ。

 オレは左のほっぺたを2回と右のほっぺたを2回たたいてみた。そして脳の回転が鈍くなっていたオレはやっとイスラエルからエジプトへ行くにはスエズ運河という場所を通る必要があることを思い出した。

 我に返ったオレはやったー!と心の中で叫んで、ダッシュでその壁(堤防)の上面まで駆け登った。そしてオレがこの目で見たのは教科書に載っているだけで死ぬまでに絶対見ることなどないと思っていたスエズ運河だった。

 運河を挟む堤防と堤防の幅は150-200メートルくらいか。水が流れる部分は100メートルもないかもしれない。橋をかけるのはいろんな意味で難しいのであろう。ここの運河横断地点では、オレたちの乗ったバスは簡易なフェリーによって対岸まで運ばれた。

 このときオレは自分にとっての5つ目の大陸、アフリカへと足を踏み入れたのだった。

 エジプトは頭からネジが10本ほどドッと抜かれていくような錯覚を与える国である。オレの頭はカイロへ着いたその瞬間から絶え間なく混乱した。

 エジプトはビルマと同じほど、あるいはそれ以上の数多くの非日常的な体験を自分にさせた国である。このわずか3週間の旅程ほどいろんな出来事が次から次へと現われては消えていった日々はかつてなかった。

 その全容を述べるなどこの貧筆ではとうてい及ぶべくもなく、このページ以降でその中のごく一部を紹介していく。

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