G-12 バラの切り花作りの仕事は快調。でも相方のイギリス人は英国病

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1987年4月F日

バラ, 切り花

 仕事は快適だ。ファーマーのマイロンはゴソゴソイソイソといつも忙しげに働き回り、けっこう口うるさいながらも、ついて行きやすいタイプのボスだといえる。

 マイロンはカリフォルニア大学で農業の学士号を取ったとかで、オレたちボランティアにもバラについての専門知識を、必要に応じてていねいに教え込んでくれる。

 他のファーマーによると、マイロンはかなりの高収入をこのバラによって上げているとかで、オレの目にも彼の様子が朗らかなものとして映る。

 仕事は朝6時から11時までと2時から5時までの合計8時間。主にバラの切り花作りを行なっている。あるところまで成長したつぼみがついたバラの枝の所定の箇所をハサミで切り取り、その枝の長さによって「SL」(スーパーロング)、「L」(ロング)、「M」(ミディアム)、「S」(スモール)の4つのサイズに仕分けする。そして、それらサイズ毎に束ねてその日の午後にやってくるトラックに積み込んで行く。

 早朝、まだ太陽が昇り切らず、冷たく澄み切った空気に満たされた朝のグラスハウスの中で、ラジオから流れるクラシック音楽を耳に、ローズピンクのバラを刈るという作業は、仕事にするにはぜいたくなほどロマンチックな作業である。

 トラックに運ばれたバラは手続きが済み次第、即刻テルアビブの空港から次の飛行機に乗せられ、ヨーロッパ各都市へと送られる。スカンジナビア、西ドイツあたりが最も良い値で買い取っていくということだが、オレの刈ったバラが、どこかの家庭や職場の食卓や居間やオフィスの潤いとなっているであろうことを想うと、バラに短冊をつけて、何かやさしいメッセージを添えて送りたくなる。

 もしかしたら西ドイツのアーニャや例のノルウェーの魚工場の人たちもオレの刈ったバラを・・・、などと考えることが、楽しみの少ないこの地では精神浄化のためのまたとないよいクスリである。この仕事はけっこう自分自身をエンジョイさせてくれるものだといえる。

 ただここでの大きな問題は、もう一人のマイロンのプライベートボランティアでオレと同室のジムの働きぶりが、ちょっと付き合いかねるものであるということだ。

 ジムはアイルランド移民の父を持つ21才のロンドンっ子で、職業は水道管工だという。やつは悪いやつでは決してないが、いわゆる「英国病」というやつに犯されていると思えるふしがところどころに発見される。

 やつは仕事は早い。が、それはいかにも雑である。また、やつは与えられた仕事しか必要以上には絶対にしようとはしない。そして自分の権利は驚くほど執拗に主張する。

 パースのレストランのオーナー、スズキ氏が言っていたが、オーストラリア人の労働者は上から言われたことについては日本人以上の仕事ぶりを示すが、言われなかったことにはまったく手をつけようとはしない、何か手をつけることを悪と考えているようだ、などと言っていたことを思いだす。

 またカラーサでお会いしたある船長が、
「ハルナさんよ、混乗船(日本人と外国人の乗組員とで混成された船)とかけてコンピューターと解く、そのココロがわかるかな?」
と訊いてこられたことがあった。オレがわかりません、と答えると、船長は、
「あなた、コンピューターを知っているだろう?コンピューターは入力する人間が、ミスなくきっちりと命令をしてやらなければ何もしないという代物だ。つまり一般的に外国人労働者というやつは命令されたことはしっかりまっとうするが、命令されないことは何もしない。そんな皮肉を込めた言い方なんだよ。

 昔、ある書物に、日本以外の国では職務の分担が極めてはっきりしていて、労働者相互がそれぞれの領域に踏み込んでまで仕事をするというようなことはほとんどないと、書いてあったことを思いだす。

 これまで2年も外地に住んで、そういう印象がないでもなかったが、このジムほど極端なやつにはお目にかかったことはない。

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