1987年5月E日

今日、モシャーフの少年たちチーム対ボランティアチームのサッカーの試合があった。ワイワイガヤガヤとみんなで大騒ぎのこの上なく楽しき2時間だった。
世界のさまざまな国から集まったやつらが力を合わせ、混成チームとなってボールを追いかけ回すのはきわめて気持ちのよい体験だった。
オレはサッカーがあまり好きではないと言いつつ、試合が始まるとセンターフォワードのポジションをいつのまにか奪っていたマーク。
みんなからはクールで取っ付きにくいやつだと思われていたスウェーデンのステファンはボールをカラ蹴りして後頭部を地面に叩きつけ、みんなの大笑いをかう。
もとデンマーク陸軍のグリーンベレーで人を何人か殺してきたという噂のある身長192センチの巨漢ヤコブはその凶暴な外観に似合わず、センタリングされたボールを絶妙のヘディングで枠の左隅みにゴールを決め、そのあと喜色満面でスキップ。見守る女性ボランティアから、
「Whao! Pretty boy!」(わあ、可愛いベイビー)
「Sweet Denish pie!」(おいしいデニッシュパイ))
と声をかけられ、さかんに照れていた。
ゴール前ぎりぎり50センチで相手のシュートを必死のスライディングでセービングして、
「You’re fucking great defender, mate !」(すごいディフェンダーだ、お前は!)
と叫びながら走り寄ってきた身長190cmセンチ、体重100キロの山のような大男の南アフリカ人ヤンに、胴体を真横から抱え上げられて地上2メートルの高さで振り回されたオレ。
はっきりいって、この季節のモシャーフの生活はそれほど楽ではなくなっている。最近では日中の暑さのため、ほとんどのボランティアが朝5時から10時までの5時間と昼5時から8時までの3時間という異常な勤務パターンで仕事をしている。
そして10時から5時までのシエスタ(午睡。昼寝の時間。昼休みを多くとる地中海沿岸地方の習慣)の間には暑くて何もする気が起きず、ただ寝るだけ。みんなここでのそんな生活に多分にイヤ気がさしてきた頃だっただけに、今日は実に気持ちが和んだ一日だった。
今日オレたちはサッカーという世界で最も人気があり世界のどこでも行われているスポーツを媒体としてひとつにまとまった。それはサッカーというスポーツのルールをみんなが知っていてこそ、大勢の人々が自由かつ平等に参加できた。
つまりサッカーというひとつのスポーツが、世界各国からまったく無作為に集まったボランティアたちをスムーズに一体化させるコミュニケーションの媒体となりえたのだ。
このサッカーのルールのような世界各国に共通な言語というものがあれば、もっともっと世界はまとまりやすくなるんではないだろうか。今日、みんなで泥まみれ、汗まみれになりながらボールを追ってそう真剣に思った。
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